閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

おとぼけオーギュスタン

製作年度:1995年
製作国:フランス
上映時間:61分
監督:アンヌ・フォンテーヌ
脚本:アンヌ・フォンテーヌ
出演:ジャン=クレティアン・シベルタン=ブラン 、ステファニー・チャン 、ギ・カザボンヌ 、ノラ・アビブ
評価:☆☆☆

自意識が全く欠如しているがゆえに,他者と同調することがないいかにもさえない人物が主人公.その独自のリズムの言動は,周囲を失笑あるいはうんざりさせる.喜劇ゆえに主人公の性格設定は極端ではあるものの,こうした極度に不器用で融通の利かない人物は現実にもいないわけではない.
シベルタン=ブランの演技は,素でやっているのかと錯覚してしまいそうになるような迫真の演技.常人とそうでない人の境界的人格を巧みに再現していた.
こうした人物を受け止める周囲の人間の,嘲笑的でありながら寛大で暖かささえ感じる受容の様子は,いかにもフランス的な雰囲気であるように思える.
映画の主題は『奇人たちの晩餐会』と重なるが,「奇人」の描写ははるかに写実的で現実感がある.アパートや町の風景やディアローグが日常的雰囲気をよく伝えているので,フランス語の授業の教材としてもいいかなと思う.
イノセントな喜劇を装いつつ,実はとても意地悪で悪意あるユーモアの映画だ.