閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

アニーよ銃をとれ

ANNIE GET YOUR GUN

  • 上映時間 107分
  • 製作国 アメリカ
  • 初公開年月 1951/10/
  • ジャンル ミュージカル
  • 監督: ジョージ・シドニー
  • 製作: アーサー・フリード
  • 脚本: シドニー・シェルダン
  • 撮影: チャールズ・ロッシャー
  • 音楽: アーヴィング・バーリン、ロジャー・イーデンス、アドルフ・ドイッチ
  • 原作: Herbert Fields ハーバート・フィールズ、Dorothy Fields ドロシー・フィールズ
  • 原作戯曲: Richard Rodgers リチャード・ロジャース、Oscar Hammerstein II オスカー・ハマースタイン2世
  • 脚色: Sidney Sheldon シドニー・シェルダン
  • 出演: ルイス・カルハーン、ハワード・キールベティ・ハットン
  • 評価: ☆☆☆☆★

スタンダードナンバーである「ショーより素敵な商売はない」ほか、印象深い歌曲を数多く含むミュージカルの古典的名作。主人公のアニーは19世紀末から20世紀はじめのアメリカに実在した銃の曲撃ちショーのスターだと言う。主演のベティ・ハットンは、骨太のおばさんぽい顔立ちで、そのルックスのたくましさは映画のヒロインとしては破格だと思うが、アニーの天真爛漫な魅力と男顔負けの曲撃ち師にふさわしい負けん気の強さいう両面をくっきりと表現し、次第に引き込まれる。そのパワフルな歌いっぷりも魅力たっぷりだ。アニーの恋人のフランク・バトラー役のハワード・キールも、職業芸人としてのプライドとアニーのまっすぐな恋心の間で揺れる男の葛藤を爽やかに演じる。
アニーの人物造型には、開拓時代のアメリカの純朴で健全な精神が具現されているように思える。作品は粗野な荒々しい雰囲気で、インディアンの描き方などはレトロな差別的類型化もあるけれども(ただしインディアンは「悪役」として登場するのではなく、作品では、興行座長のバッファロー・ブルとともに、自然児アニーの経験豊かな後見人の役を果たしている)、素朴でまっすぐな西部劇的精神、アメリカの田舎の大らかさへの素直な郷愁と共感に満ちている。
登場人物はみな極めて類型的なのだが、職業人としての成功と私人としての幸せの葛藤というテーマは普遍的であり、アニーとフランクというカップルの感情のすれ違いは現代の観客でもリアリティを感じることができると思う。
作品中のナンバーがどれも印象深い旋律の名曲揃いで、役者のパフォーマンスも達者。脚本もよくできていて、ちょっとした台詞が筋の伏線として効果的に利用されている。