閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

シェルター

ポムカンパニー
Pom Company

  • 脚本・演出:松木円宏
  • 舞台美術:田中新一(東京メザマシ団)
  • 舞台監督:鴎佐和志孝(L.U.C.T.)
  • 音響:香田 泉
  • 照明:関矢幸恵
  • 出演:金馬貴之(マリエ・エンタープライズ(株) )、升望( プロ・フィット)、境浩一朗、大窪尚記(劇団BLUESTAXI)、大和由季、大迫健司、倉持徹也(C.Kプロモーション)、小林麻祐子(Humming bird)、佐藤有子、戸塚るり、松木円宏(ポムカンパニー)
  • 劇場:西荻窪 遊空間がざびぃ
  • 上演時間:100分
  • 評価:☆☆☆★
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劇団初見。知り合いが出演しているので観に行った。
芝居の内容は「地球に巨大隕石衝突して滅亡する日の、とあるシェルターでの話」(上演パンフより)。このシェルターに集まる九人の人間の姿が描かれる。
設定としてはよくある話で、つい最近見たラース・フォン・トリアーの映画、『メランコリア』はまさにこの設定の話だった。
上演まで芝居のチラシもちゃんと見ていなかったのだけれど、昨夜、寝るときに、娘とyoutubeで巨大隕石衝突のシュミレーションの動画を偶然見ていた。

ポムカンパニーの『シェルター』であるが、正直なところ、この種の主題の作品は、トリアーのエキセントリックな『メランコリア』を見たばかりというのもあって、あまり食指が動かない。とりわけ今、こうした題材だと、必然的に昨年の震災がそこに重ねられてしまうというのも、私としては若干気が重い。いつもなら必ず観に行く柴幸男の新作と桃園会の公演をこの三月パスしたのは、震災を喚起させるような芝居であるらしいことを知ったからだ。圧倒的で息が詰まるような現実の映像をあれだけ見せられた状態で、小劇場がそうした題材で芝居を作ることに私はどこか空々しさを感じてしまうのだ。

それはともかく『シェルター』、話としてはよくできていたと思う。隕石衝突の一〇年前からずっと眠ったままの兄の内的ダイアローグを話の軸に置くアイディアは面白い。しかし展開や心理描写が定型的で意外性に乏しい。どこか教科書のお手本という感じの端正さがある脚本だと思った。既視感のある物語を既視感のある雰囲気で再現したという感じで、オリジナリティがあまり感じられないのが私には物足りなかった。人物造形に深みが乏しく、各人物の葛藤から生まれ出るはずのドラマが弱かった。登場する人物それぞれに舞台のなかで活躍の場が与えられるように配慮されていたせいもあるが、演出の指示と各役者の表現技術の問題もあったかもしれない。全体にオーバーアクション気味。しかし会話のリズムや話の流れはよかったので、退屈はしなかった。

私がこうした隕石衝突のパニックものを作るとしたら、と想像してみた。是非やってみたいのは、地球滅亡のストレスに耐えられず、舞台上の登場人物が突然、全員全裸になるという展開だ。最後の1/3は全裸の役者たちによる芝居となる。地球滅亡のパニックなので、全裸になる必然性もあるだろう。こんな滅亡パニック舞台作品を見てみたいものだ。