清水義範『青山物語1979郷愁完結編』(光文社文庫,2004年)
ISBN4-334-73616-5
評価:☆☆☆☆
家の近所の古本屋で発見.古本かと思えば帯び等もすべてそろった新本だった.青山での著者の会社員時代を描く三部作の完結編.この1月に出たばかり.嘱託となり小説家を本格的に目指す一年を描く.著者によると事実度30%でかなり小説的な脚色が施されているそうだが,著者をモデルとする主人公のメンタリティはほぼ現実に即しているだろう.冷徹で堅実な自己認識のあり方に好感を持つ.
前二作と比べると,時代描写の割合が減っていて,著者自身の会社の人間関係を丁寧に書くことで10年のサラリーマン生活を経て精神的にたくましくなった著者の姿を描くのに重点が置かれている.