- 評価:☆☆☆
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ビデオでの鑑賞.
不安定でナイーブな思春期の少年少女の姿を,残酷にかう叙情的に描いた映像詩.
関東平野の田園をバックにした映像の美しさは特筆もの.しかし岩井俊二の青臭く自己陶酔的で,しかも極めて作り事めいた叙情表現は,鼻につくし,パターン化しマンネリに感じられるときも多い.ドビュッシーの音楽の使い方などあまりにあざとくていやな感じがした.
あと露悪的ないじめの描写にも胸が悪くなった.にもかかわらず☆三つの評価になったのは,こうした臭みにもかかわらず,観賞後に美しい余韻を残すラストだったから.
岩井俊二の作品は,その映像美にひかれつつも,うっとうしいナルシズムには拒否感も感じる.
かつて思いきり彼の映像世界にひたってしまうことがあった.
1996年制作のcharaが主演していた『スワロウテイル』と『PicNic』の二本立てを,今はなき高田馬場東映パラス(閉館してしまったが,ここは今考えると本当によいプログラムが多かった)で1997年2月に観たときのことだ.博士課程浪人一年目.博士課程一次試験が終わったあと.結局一年間の浪人生活は報われず,この後博士浪人二年目を迎えることになる.今も苦しいが,当時の抱えていた絶望感は今よりも大きかったはずだ.この時観た岩井俊二の美しく緊張感ある映像は,僕の心に直接染みとおった.二本目の『スワロウテイル』を見終わったあと,体がそのままイスにのめり込むような感覚で,しばらく立ち上がることができなかった.映画を観たあとでふがいない己の境遇に対する思いが込み上げ,ぼろぼろと涙を流した.