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謎の天才オルガニストの登場,若手の天才オルガニストの友人思い出,交通事故,オルガニストの失踪,老オルガニストの死と続く前半2/3は,ミステリー仕立ての構成が作品の雰囲気によく合致していた.オルガン音楽と楽器としてのオルガンについての詳細な蘊蓄が効果的に取り込まれている.ただ謎のオルガニストがかつて語り手の友人だった天才オルガニストであったことはかなり早くから読めてしまうのではあるが.交通事故で再起不能であったはずの彼がどのようにしてオルガニストとして再起できたのか,なぜ自分の身を親友にまで隠していたのか,なぜかつての指導教授であった老オルガニストはしなければならなかったかという三つの謎解きが最後の部分の中心になるが,このみっつの説明があまりにも性急すぎる.またSFじみた解決策は,どうも僕には興が削がれてしまう.SF的想像力を因果に結びつけてしまうと,どんなミステリアスな謎もとたんに底が浅くなってしまうような感じがしてしまうのだ.ラストもSF的アイデアだが,前半部の緻密な楽器や音楽やそれにまつわる人間心理の描写を思うと,不満が残る.