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丁寧な取材に基づき堅実な文章でつづられた植村直己の伝記.
先日非常に面白く読んだ寺山修司の評伝同様,誠実なルポルタージュ.植村直己の周囲の人間との関係を丁寧に描くことで,植村の人柄と人生観にはっきりとした輪郭を与えている.
植村直己がマッキンリーで死んだとき,僕は高校一年だった.中学校の学級図書に紛れていた『青春を山に賭けて』をたまたま手に取ったところ,但馬出身の田舎青年の無謀な海外放浪譚と夢に向かってのひたむきさがしびれるほど面白く,その後,植村直己の著作を読みあさった.エスキモーとの生活の情景がほほえましい『北極圏一万二千キロ』もグリーランド・北極点の犬ぞり旅行記も面白かったが,植村直己の処女作たる『青春を山に賭けて』の面白さは別格で,より大きな未知なる世界への憧れをかき立てられた.愚鈍なまでに一生懸命である植村の姿は滑稽であると同時に崇高でもある.