閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

キャバレー『黒猫』の影絵

  • Spectacle Le Chat noir
  • 演出・人形操作:Jean Godement
  • 人形操作:Josette Stein
  • 出演:Francoise Le Golvan (mezzo), Jerome Correas (baryton-bass), Claud Aufaure (recitant), Susan Manoff (piano)
  • 監修:Mariel Oberthur
  • 劇場:オルセー美術館,オーディトリウム
  • 評価:☆☆☆★

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1885年にモンマルトルで開店したロドルフ・サリスRodolphe Salisの経営するキャバレー「黒猫」は,すぐにパリ中の芸術家や作家でにぎわう店となった.この店の目玉は影絵芝居のスペクタクルとそれに挿入されるシャンソンのショーだった.
今日の公演はピアノ伴奏とメゾソプラノとバリトン歌手各一名,司会進行役一名で,当時黒猫で上演された影絵作品上映を再現したもの.ピエロとダンサーの恋を描く「黄金時代」,新約聖書のたとえ話を題材とする「放蕩息子」などの影絵作品が,軽妙な進行とシャンソンでのつなぎで上演される.影絵はそれぞれ20分ほどの長さ.影絵作品自体はそれほど面白いものではなかったけれど,当時の黒猫の洒脱な雰囲気への想像をかき立てるよくできたプログラムだった.最初の口上と最後の締めの部分が,おまけぽくみえて実はきわめて重要なことがわかる.今回は学究的試みの枠組みだったが,こうした再現はやはり実際にカフェ・テアトルで夜にたばこの煙と酒場の喧噪の中に行われるとさらに味わい深いはずだ.俗世のペーソスを感じさせる影絵芝居が提示する幻想は,確かに日常の退屈を変換する力をもっていたことだろう.公演時間は一時間15分ほどだった.
平日昼の公演ということもあり,会場は退職老人のカップルだらけだった.