http://www.cinematopics.com/cinema/works/output2.php?morephoto=ON&oid=5918
鳥肌実演じる主人公は,きわめて不器用かつ自己中心的であるため,周囲と同調することができず孤立してしまう青年(オレみたいだなぁ).必然的に孤立してしまうのであるが彼はその孤立に別に苦しんでいるわけではない.ある意味,純粋で子供っぽい人物である.それゆえ彼の存在は周囲の人間の保護本能を刺激し,それなりに愛されている.彼が孤立に安住できるのも,そうした周囲の「愛」を感じているからこそである.
若くてどこかもろさのある女性3名とのはかない恋愛とその破綻,そして彼を愛する両親の相次ぐ死,彼の勤務先の倒産などが,彼の安定した孤立を少しずつ確実に動揺させる.通常映画の登場人物にならないような,きわめて平凡で日常的でかつ周縁的な人物にスポットをあてた風俗劇.
「テルミンと俳句の会」といった挿入される小ネタのセンスのいびつさが優れている佳作.俳句の会の主宰者役の伊武雅刀の怪演ぶりに大いに笑わせられる.他の役者も「小劇場」的な濃い個性を発揮する.