閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

生きているものはいないのか

五反田団+演劇計画2007
http://tp-kac.com/KAC_TP_j_maeda.html

  • 作・演出:前田司郎
  • 美術:@gm
  • 照明:高原文江
  • 舞台監督:浜村修司
  • 出演:尾方宣久、宮部純子、駒田大介、鈴木正悟
  • 上演時間:約2時間
  • 劇場:駒場アゴラ劇場
  • 評価:☆☆☆★
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三段の黒いひな壇状の舞台。背景は黒、右後方には事務机と本棚、右前方にはガラスの丸テーブルといすが置かれているだけの簡素な美術だった。
三層になった舞台の上段、中段、下段で別々のエピソードが平行して順繰りに演じられる。とある大学町のキャンパスの一角での学生たちのやりとり、大学に隣接する大学病院の一室、大学のそばの喫茶店のテーブルでの三角関係の男女の交渉ごと。現代の若い世代の風俗を、独特の空白感でリアルに描き出す手腕は相変わらずたいしたものだった。登場人物たちのどこか弛緩した感じのやりとりに大いに笑わされる。エピソードはそれぞれ完結した内容をもち、劇の前半にはそれらが結合していくような要素は見当たらない。どこにいきつくのかわからないこの不安定感もよく計算されている。
咳の発作からはじまった突然死によって、劇の方向が一気に転換する仕掛けは見事だった。後半は突然悶絶死の連鎖という不条理な情景が、スラプスティックな笑いとともに続く。しかし展開が読めてしまうと飽きてしまうのも早い。今回の公演は超満員で観劇環境が苦痛に満ちていたこともあり、7,8人目の死者が出てからあとは、「あと何人死ぬとなると、どれくらいで終わるかな。ああ、つらい、早く終わってよ」という感じだった、僕は。
手塚治虫のSF漫画に似たようなイメージの作品があったような気がする。人がばたばたと意味を問うまもなく死んでいくという状況の提示したいはそれほど斬新なアイデアとは思えない。その不条理をどたばたの笑いだけでなく、得体の知れない不気味な問いかけでもっても表現してもらいたかった。