劇団TipTap 第三回公演
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【スタッフ】
作・演出:上田一豪
照明:岩下由治
音響:上野雅(SoundCube)
舞台監督:藤田有紀彦
音楽監督:榎本三和子
歌唱指導:清水泰雄
演出助手:小池彩子、権五柱、菅野真以、石丸香織
美術:松原優介
衣裳:Kashico
宣伝美術・振付け:車杏里
プロデューサー:安藤洋介
【キャスト】
安藤洋介、石丸香織、小池彩子、権五柱、南裕理子
安達慎一郎、吉清寛二、木村明子、澤村友里恵、柴田麻衣子、清水泰雄
- 上演時間:1時間30分
- 劇場:早稲田 早稲田どらま館
- 評価:☆☆☆☆
教え子が出演するので見に行った。早稲田のミュージカル研究会のOBを中心に2年前に結成されたミュージカル劇団。東京の外れにある小さなレストランが舞台。クリスマスの夜、そのレストランにミシュランの覆面調査員がやってくるという情報が入り、レストランのスタッフは浮き足立つ。
舞台の間口が6,7メートル、客席は50席ほどの小劇場公演ながら、思いの外、本格的な質の高いミュージカル作品を楽しむことができた。
ミシュランガイドという時事的な素材を核に、このレストランにやってきた4組の客とレストラン・スタッフのエピソードを絡める構成がよくできていた。
回り舞台の美術が非常に効果的に使われていたことにも感心する。物語展開ときっちり連動し、心地よいテンポを作品に生み出す。回り舞台の一方の側は厨房、もう一方はレストラン客席となっている。客席テーブルは4組出ていたが、そのうち二組は階段を上った高い位置に作られている。狭い舞台空間を縦横すみずみまで有効に使っているため、登場人物の多さにもかかわらず、ごちゃごちゃと混乱した感じがない。視覚的に必要な情報がぎゅっと圧縮されていた感じの舞台だった。
エピソードのディテイルの詰めや安易なギャグの多用など後から考えると粗っぽいところもあるのだけど、整理された展開のスピード感、そして音楽の素晴らしさがそうした瑕疵を覆い隠す。音楽のクオリティの高さには本当に驚いた。曲自体もいいし、歌唱指導もしっかりとされていて、低予算小劇場ミュージカルの貧弱さを感じさせない。若干ナンバーの数が多すぎて、その分物語が薄くなってしまったところもあったが、ミュージカル・シーンはこちらの心を浮き立たせるような活気があった。最後のほうで、ドタバタ劇化して、舞台速度を一気に加速させた後、ふっと弛緩させる展開も定型的とはいえ、うまく決まっていた。
三谷幸喜のテレビドラマの傑作「王様のレストラン」を連想させる作りであったが、群像劇という縛りをしっかりと踏まえ、各役者にきっちりと見せ場を作りつつ、求心力のある作品に仕上げた演出手腕はたいしたものだと思った。、商業的なミュージカルの定型をなぞったかのような無難な展開やあまりにも健全な内容で毒に乏しいのが個人的には物足りないが、制限の多いリソースを工夫して最大限有効に利用し、充実したスペクタクルを提示できていたように思う。役者の女の子も可愛かったし。
1500円でこれだけ楽しませてくれたのだから満足だ。