- 監督:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
- プロデューサー:岩下英雅、李柱勲、杉山剛
- 原作:大槻ケンヂ 『グミ・チョコレート・パイン』(角川書店刊)
- 脚本:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
- 撮影:小澤公則
- 美術:長谷川晃子
- 編集:斉藤和彦
- 音楽:ゲイリー芦屋
- テーマ曲:電気グルーヴ 『少年ヤング』
- 出演:石田卓也、黒川芽以、柄本佑、金井勇太、森岡龍、高橋ひとみ、山崎一、犬山イヌコ、山西惇、みのすけ、峯村リエ、浅野和之、中越典子、山本剛史、マギー、甲本雅裕、大森南朋
- 劇場:渋谷 Q-AXシネマ
- 満足度:☆☆☆☆
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自分をとりまく世界のわい小さ、平凡さに苛つきながらも、その世界の外側へ跳び出す方法も勇気も能力もないまま、とりあえずマスターベーションにはげみながら、もんもんと鬱屈した日常を過ごすのは、青春の一つ定型であるように僕は思う。大槻ケンヂの『グミ・チョコレート・パイン』ではこうしたみっともなく、恥ずかしい青春像がリアルな共感をこめて描かれている。
この小説を映画化するとなれば、大槻ケンヂと高校時代からの友人であるケラはまさに適任者と言えるだろう。僕はケラの最初の映画『1980』も大好きなのだが、彼のひねくれてドライな感性は、『グミ・チョコ』の世界と相性がいいように思えた。
映画は、うーん、悪くないけれど、ちょっと乾きすぎでカッコよすぎな感じがした。原作小説を最後に読んだのはもう十年以上前(『パイン編』を除く)でかなり記憶が曖昧なのだけれど、映画版は原作の登場人物設定を踏襲し、原作にあるエピソードを盛り込みながらも、原作とはまた別個のお話になっていた。ヨレヨレの四十歳間近になった主人公が、一通の手紙をきっかけに高校時代をふり返るという設定になっている。
不器用でごつごつと生きていた高校時代の輝きと日常に退廃しくすんでしまった40前の現在が対比される。
青春映画なのでストレートに観客の期待の地平を盛り上げるようなエピソードもあるのだけれど、その期待を絶妙なタイミングでずらして笑いをとるセンスと技術はケラならではのもので、何度も笑わされたが、この「テレ」を物語とどう折り合いをつけるのかがけっこう微妙だ。大槻ケンヂ原作もひねくれてはいたけれども、青春小説特有の青臭い熱っぽさは濃厚だった。
ケラの洗練はこうした青臭さにストレートに向かい会うことができない。小技のギャグの切れはよく、ことごとく僕は笑ったのだけれど、作品としてはずいぶん薄味のものになってしまった感じがした。メインの役者が僕の抱いていたイメージが違っていたのも、もうひとつ映画の中に入り込むことができなかった要因かもしれない。
退屈はせず、十分に楽しむことはできた。
ただ期待が大きかったのでその分ちょっと物足りない。