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NYLON100℃ 第28回公演
- 作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
- 美術:礒田ヒロシ
- 照明:関口裕二
- 映像:上田大樹
- 衣裳:前田文子
- 出演:みのすけ,犬山イヌコ,三宅弘城,大倉孝二,峯村リエ,馬渕英俚可,山崎一
- 劇場:下北沢 本多劇場
- 評価:☆☆☆☆☆
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「私戯曲」と銘打っているがナンセンスなギャグ満載の幻想的な作品である.しかし死の間際にどんどんと痴呆が進む老人の言動を残酷に笑いにする物語の素材が作者自身の父親についての物語でもあるゆえに,作者の徹底したニヒリズムと戯作者精神に胸打たれるものがある.無惨な現実に唖然としながらも,作者はその現実を直視し,絞り出すようにシニカルな苦笑を漏らしたのではないだろうか,などと想像してしまうからである.
わざわざ「私戯曲」と銘打ったのは,観客の側にもこの葛藤の共有を期待したからであるように僕には思えた.
ケラの黒いギャグには青臭い偽悪が常に漂う.その切れのいい破壊性は僕の笑いの周波数とよく合致するのだが,ざらざらとした舌触りの悪さの残るギャグでもある.今日の公演のギャグにも僕好みの黒いナンセンスがいくつもあり,腹が痛くなるほど笑ったシーンがいくつもあった.しかし父親の痴呆に対する容赦ない攻撃にこそ,ケラの父に対する哀悼がこめられているように僕には思えた.そのギャグのばかばかしさ,攻撃性の度合いの激しさゆえに,終演後はちょっと泣いてしまう.
みのすけ,犬山イヌコ,三宅弘城,山崎一,みないつもどおり驚異的に達者な芝居でアキさせない.馬渕英俚可も実に可愛らしい.
四度目の再演だけに細かいところまで配慮の行き届いた完成された舞台だった.
照明効果も極めて饒舌に舞台に変化を与えていて印象的.