閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド(2007)
THERE WILL BE BLOOD

19世紀末から20世紀前半のアメリカ西部で「石油屋」としてのしあがっていく男のタフな半生を追うことで、自己肥大の欲望のグロテスクを重厚に描き出す叙事詩的映画作品。その欲望への徹底した忠実さゆえに、この男の生き方には極端なストイシズムさえ感じる。「石油屋」としての成功と引きかけに男はさまざまなものを喪失していく。その喪失の過程の孤独感が深まっていくたびごとに、男はどんどん欲望の怪物へと姿を変えていく。
男の合わせ鏡的人物として西部の荒野で宗教者としての成功を貪欲に望む牧師のエキセントリックな姿も強烈。この時代の西部アメリカの石油利権の周辺にいた人間の荒々しさとヒステリーを、二人の人物が象徴的に示しているように思える。
夜の油田火災の場面の壮絶な美しさ、さいごに男が直面する二つの対決の場面の緊張感がとりわけ印象に残る。