歌舞伎座
http://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/2008/04/post_24-ProgramAndCast.html
一、将軍江戸を去る(しょうぐんえどをさる)
三、浮かれ心中(うかれしんじゅう) 中村勘三郎ちゅう乗り相勤め申し候
久々の歌舞伎座。昨年末11月以来のように思う。十分に睡眠をとって体調万全で臨んだつもりだったが、真山青果の『将軍江戸を去る』は開始15分で沈没。真山青果作品は僕にとっては本当に手強い。正直なところ、彼の芝居のどこが面白いのかまったくわからない。橋之助演じる山岡鉄太郎が徳川慶喜に江戸開城を一生懸命説得して、徳川慶喜が最終的にそれに同意して、城を明け渡し水戸に赴く、という内容。一生懸命の説得が見所らしいけれど。照明も暗かったこともあり熟睡率高かったはず。僕もほとんど寝ていたに等しい。一本目は最初からパスしておけばよかった。
それにしても歌舞伎座の三階席はあんなに窮屈なのになんであれほど快適に眠れるのだろうか。
『勧進帳』は仁左衛門の弁慶がとても立派に見え、今日は退屈を感じなかった。展開の中のめりはり、緊張と弛緩の組み合わせの面白さを感じることができた。ちょっとだけ、ようやく、『勧進帳』の魅力がわかったような気がした。
『浮かれ心中』は原作小説の世界がたくみに歌舞伎化されていたように思う。戯作者としては三流の才能しか持っていない大店の若旦那が、戯作者としての洒落の追求に、結果的に己の命を賭けてしまう話。自分の人生が洒落になってしまうのだから、戯作者としては本望なのかもしれないが、身を削ってまでばかばかしさを突き進むその姿は、見方を考えればそのばかばかしさゆえに壮絶な凄みがあるとも言える。僕は原作小説では、主人公の愚かさがどんどんエスカレートしていくギャグに笑いつつも、そのナンセンス人生の徹底ぶりに身震いするような迫力も感じたのだ。
勘三郎は上方のつっころばしを誇張したような感じで役柄を演じる。暗転を使った頻繁な場面転換も楽しい。時蔵のどす声ギャグもおかしかった。勘三郎を中心に調和のとれた喜劇世界が提示されていたように思う。最後は「チュウ乗り」。駄洒落つながりのまったくのナンセンスなのだけれど、このくだらなさはまさにこの芝居の主人公の生き様にふさわしい。そして勘三郎の「チュウ乗り」の華やかさとたのしさは、期待通り、観劇の喜びを存分に味合わせくれるものだった。