劇団昴
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- 作:ドニ・ディドロ
- 脚色:マーガレット&ジュリアン・フォーサイス
- 訳:浜野浩一
- 演出:村田元史(演劇企画JOKO)
- 美術:高橋まい子
- 照明:古宮俊昭
- 衣装:山口徹
- 音響:藤平美保子
- 出演:舞山裕子、北村昌子、稲垣昭三、西本裕行、染谷麻衣、吉田直子、藤生聖子、望木祐子
- 上演時間:2時間10分
- 劇場:大山 サイスタジオ大山
- 評価:☆☆☆☆
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劇団昴の『修道女』は12年前の初演のときに見ているはずなのだがあまり記憶に残っていない。
原作は18世紀フランスの啓蒙思想家、百科全書の編著者として知られるドゥニ・ディドロの書簡体小説。
昴の『修道女』は、1994年にイギリス人演出家によって舞台化された際の脚本に基づくものだった。この翻案がとてもよくできている。ダイアローグのつながりが自然で、展開に停滞感がない。各場は暗転でつながるが、そこにはかならずいくらかの時間経過がある。この時間的空白の挿入の仕方もよく考えられている。あまり期待せずに見に行ったのだけれど、思いのほか面白い舞台だった。
意に反して親に修道院に入れられてしまった娘が、修道院脱出のため孤独な格闘を続けるものの、運命に見放された彼女は、閉鎖的な修道院世界の腐敗の犠牲となり、なぶられ、傷つき、衰弱していく。最後にようやく彼女は修道院から脱出することに成功し、彼女は自由を手に入れる。しかし外界の生活の過酷さ、修道院による捜索におびえる彼女の姿には、救いがもたらされたようにはみえない。
ディドロの無神論的な諧謔精神が組織のおぞましさ、宗教の偽善、女性への不信が露悪的に描き出す。集団によるイジメの嗜虐的快楽がリアルに描かれ、修道会における同性愛など倒錯的な性の描写もある。主人公の不運の連続と女子修道院の戯画は昼メロドラマを思わせるような、ヴァイオレンスとエロスに満ちている。ただし昴の表現は古典主義的な端正さを保ち、下品に陥っていない。
劇団昴の表現は全般に抑制された感じで、人物造形が若干平板に感じた。しかし物語の魅力は楷書体できっちりと伝える堅実な舞台だった。主演の若い女優を筆頭に役者はていねいに人物を作っているような印象を持った。主演女優は劇団養成所を出たばかりの新人だそうだが、2時間の舞台をしっかりと支える堂々とした存在感を示していた。過度に情緒に寄りかからず、淡々と人形のように中立的・無機的な存在を示していたのがよかったのだと思う。
オルガン伴奏のミサ曲中心の音楽の選曲と使い方はあまりにもべたすぎて僕の好みではなかった。半具象的な美術は中途半端な感じがし、舞台の雰囲気が安っぽくなってしまったのも残念。徹底して抽象的な美術のほうが効果的だったかもしれない。
この作品、三条会で見てみたい。強烈なえぐみのある面白い舞台になりそうなのだけど。