燐光群
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/sensoutoshimin.html
中山マリ、鴨川てんし、川中健次郎、猪熊恒和、大西孝洋、樋尾麻衣子、杉山英之、小金井篤、安仁屋美峰、阿諏訪麻子、伊勢谷能宣、いずかしゆうすけ、秋葉ヨリエ、桐畑理佳、西川大輔、吉成淳一、武山尚史、鈴木陽介
- 劇場:下北沢 ザ・スズナリ
- 上演時間:2時間35分
- 評価:☆☆☆★
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燐光群の芝居を見るのは昨年秋の『ワールド・トレード・センター』以来である。主題が社会派で重いし、演技も熱いし、上演時間も長め、ということで燐光群の芝居のチケットを買うときにはいつもちょっと躊躇してしまうのだ。
今回のタイトルはド直球。このあまりに直球すぎるタイトルに坂手洋二の意気込みを感じる。渡辺美佐子も出ているし、見に行くべき(「べき」ってつい使ってしまいたくなる)芝居のような気がした。
2時間35分休憩無しで暑苦しい燐光群芝居にひたる。ひたるというより、頭を押さえつけられて無理やり舞台を注視させられている感じなのだけど。
捕鯨の町が舞台。群像劇風だが軸となるのは渡辺美佐子演じるその町の鯨料理屋の女将。死んでしまった息子の妻と鯨料理屋を切り盛りしている。防空壕跡の場面から芝居がはじまる。入り口が埋もれた所在がわからなくなっていた防空壕が発見される。その防空壕は鯨屋の女将が64年前に、乳飲み子の妹とともに避難した壕だった。女将はこの壕を保存して、戦争博物館として整備することを夢見るようになる。
鯨料理屋は捕鯨漁師たちのたまり場にもなっている。捕鯨反対派の若い市民運動家がこの町で活動をはじめていた。彼らは捕鯨に消極的であるように見える現市長を支持する。この町には原発誘致のはなしもある。原発誘致をめぐって町の人間の意見は割れている。「北の国」からミサイルがこの町の沖合いに飛んでくる。この暴挙に対しなぜか政府の反応は鈍い。
次期市長の選挙戦がはじまうる。鯨料理屋の女将は、「捕鯨継続、反原発、防空壕を博物館として保存」という三つの公約をかかげ、市長に立候補する。投票日の前日、市長の候補と運動員は、「北の国」からの突然のミサイル攻撃で防空壕に閉じ込められる。
5分ほどの場面が暗転で中断されながら次々と展開していく。燐光群の芝居は演劇表現特有の嘘のつきかたを効果的に取り入れたものだ。これにより強引な物語展開力と独特の幻想味が生まれる。
今日の芝居では群集劇によって空襲が演劇的に再現された場面がとても印象的だった。
でもいくらなんても『週刊金曜日』的テーマを詰め込みすぎているように思った。そのため全体としては散漫になってしまった。最後は散らかった主題を無理やりまとめて収束させてしまった感じがした。僕のメッセージ咀嚼能力が低すぎたからかもしれないが。
「笑い」の要素がほとんどない、濃厚で生真面目で暑苦しい芝居。色気も皆無。でも楽しめなかったわけではない。詰まった芝居を見たなぁ、という充実感はある。こういった問題についてはぼくは普段あまり考えたりしないので、やはり一年に一度くらいは燐光群の芝居を見て、大きな問題の存在を意識する機会を得るのは悪いことではない、と思う。でも疲れた。