柿食う客
KAKIKUUKYAKU WEB
- 作・演出:中屋敷法仁
- 照明:富山貴之
- 衣裳:飯田裕幸
- 出演:イ・ウンセム、ライ・ジャー、イ・ソングォン、コロ、須貝英、チョン・ユンギョン、玉置玲央、村上誠基、ティエン・イーファン、七味まゆ味、深谷由梨香
- 劇場:小竹向原 アトリエ春風舎
- 上演時間:60分
- 評価:☆☆☆☆
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柿食う客の舞台はこれが初見。楽しかった、面白かった。60分。締まりのない緩やかな雰囲気が独特でとても心地よい舞台だった。
今回はBeSeTo演劇祭の参加作品となっていて、日中韓の三カ国の役者共演の舞台になっている。コミュニケーションための言語は拙い英語だ。セリフはほぼ全編にわたって英語なのだが、中学程度のレベルのものなので私にも理解可能なものだ。
設定は平田オリザの「冒険王」を連想させる。開場され劇場に入ると役者が舞台上にいるのも青年団風だ。とある場所(外国、ニューヨークっぽい)にあるアジア人が共同生活する寮(?)のリビングルームが舞台。この「寮」?のリビングルームに寮の住人とその友人たちなどが行き来する。そこでたまって会話する。この「寮」(?)はアジア人の若者だけしか生活していないようだ。劇中の会話によるとお金持ちのイタリア人の善意によってこの共同居住の場が提供されているとのこと。住人のアジア人は寿司屋で働いているらしい。彼らの共通語は拙い英語である。
だらしなく、ゆるやかな彼らの付き合いかたは自然でとてもリアルに感じられるのだけれど、場所がどこなのかはっきり明示されないし、彼らの関係についても曖昧で断片的な情報しか会話から伝わってこない。今風の海外で自由に過ごす若者たちの「青春群像」を喜劇的・写実的に描き出しながら、ここで提示されてる場はどこか不安定でひずみがあるように感じられる。この不安定感とひずみは劇が進行するにしたがって次第に拡大していく。結局この不安定感とともに、小さな不可解な出来事の数々に気を取られたまま、最後まで押しやられてしまう。ラストの場面はホラー、ミステリーの趣もある。
終演後のアフタートークも演出家のホスピタリティが感じられ、とても気さくで楽しいものだった。