閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

「摂州合邦辻」「達陀」日生劇場十二月大歌舞伎

歌舞伎美人(かぶきびと) | 日生劇場 十二月大歌舞伎の演目と配役
通し狂言
一、通し狂言 摂州合邦辻(せっしゅうがっぽうがつじ)

二、春をよぶ二月堂お水取り達陀(だったん)

  • 出演:松緑時蔵 ほか
  • 評価:☆☆☆☆
  • 劇場:日比谷 日生劇場
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久しぶりに歌舞伎を見にいった。
『摂州合邦辻』の通しは三年前に藤十郎の玉手御前で見た。場面場面はほとんど忘れてしまったが、玉手御前の愛情表現の不可解さ、グロテスクさが強調された印象的でとても面白い舞台だった。美しさという点ではもちろん菊之助圧勝だが、藤十郎の玉手にはおぞましさと迫力があった。ほとんど妖怪レベル。
今回は菊之助の玉手御前。菊之助の玉手は内面があるのかないのかわからないようなところがいい。梅枝の俊徳丸は菊之助に対抗するにはちょっと弱い感じ。菊之助の玉手は序幕、二幕目は虚ろで妖しげな雰囲気が漂っていてとてもよかった。休憩が入り三幕目にようやく菊五郎が登場。長い大詰の前半は昼ご飯後の眠気もあって脱落。本当にたらたらとゆっくり進行する。父親である合邦に刺され瀕死の状態での弁明の場面で、色欲に取り憑かれていたようだった玉手が急速にいい人になってしまうの展開にちょっと白けてしまう。玉手はそんなに立派な人ではないだろう、と誰もが思うと思うのだが。藤十郎のときに感じた欲に取り憑かれた人間のおぞましさをあまり感じない。一気にこの告白で玉手の存在が浄化されてしまった感じがした。

『達陀』は松緑が主役を演じる大規模な群舞がある舞踊劇。上演時間は五十分ほど。東大寺の二月堂で旧暦二月に行われるお水取りの行事を舞踊劇化した作品。途中で恋愛劇のエピソードが挟みこまれる。勇壮さ、滑稽さ、優美さと変化に富んだ構成で飽きさせない。激しい動きの群舞に引き込まれた。