閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

愉快犯

柿喰う客
KAKIKUUKYAKU WEB | Blog Archive | 2011年新春公演『愉快犯』

  • 作・演出:中屋敷法仁
  • 美術:原田愛
  • 照明:富山貴之
  • 音響:上野雅
  • 音楽:佐藤こうじ
  • 出演:七味まゆ味、コロ、玉置玲央、深谷由梨香、村上誠基
  • 劇場:池袋 東京芸術劇場小ホール
  • 上演時間:80分
  • 評価:☆☆☆☆
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柿喰う客を見るのはこれが2回目。
昨年7月にBeSeTo演劇祭での『Wannabe』を見ている。前作は日中韓三カ国の役者によるカタコト英語劇という制約を生かしてユーモラスであるが不気味でもある不思議な物語を作り出していることに感心した。今作は劇団員のみによる「本公演」。冒頭から異常なテンションの高さで、その勢いを維持しながら最後まで突き進む。前作とは雰囲気がかなり違う。

傾斜の強い斜め床の舞台でコント55号時代の欽ちゃんを想起させるようなバネのきいたリズミカルかつスピーディな動きで役者は動き回り、甲高い声で早口で台詞を話す。その動きと台詞回しのキレのよさは実に鮮やかで見ているだけで快感を覚える。多彩な音響効果も印象的だった。

エキセントリックな人物たちによるスピーディーで荒唐無稽なやりとりに前半はひたすら圧倒される。すごい才能だなあ、と驚嘆しながら、時折爆笑しつつ見ていたのだけれど、後半に失速。芝居は同じ強度のテンションを保っていたのだけれど、こちらの集中力が低下してしまった。破壊力抜群の破天荒な表現力に比べると脚本が弱いように私は思った。独創的で緻密な表現上の工夫は突出しているけれど、物語自体は凡庸でまとまりすぎている。作・演出家の才気のほとばしりは感じたし、既に表現のレベルでも非常に高いところに到達しているのだけれど、なんかもったいない気がした。

演出もすごいけど、この劇団は役者のパワーもすごい。美人女優の深谷由梨香があんな気合の入った芝居をするとは意外だった。彼女が主演らしい中屋敷法仁脚色、演出の『ながぐつをはいたねこ』をものすごく見てみたいけれど、残念ながら公演は三重でしかやっていないようだ。