- 作者: 筒井康隆
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2010/12
- メディア: 文庫
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評価:☆☆☆☆☆
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ミニマル・ミュージックのように同じエピソードが細部に少しずつ変化を加えながら何回か繰り返される。テープの巻き戻しを何回も繰り返し、同じ箇所を再生するたびにテープがすり切れて微妙に違った音声が流れるような感じでもある。
何回か繰り返された後で、唐突に次のエピソードが提示される。一応時系列でとある美術評論家の人生の後半が物語として語られる。
いかにも筒井康隆らしい夢をモチーフとした実験的手法の小説を久々に堪能した。同じような描写の執拗な繰り返しにも拘わらず、筒井康隆ならではのスラプスティックなギャグ、風刺、ノスタルジックで美しい幻想を巧みにおりこみ、こちらを飽きさせることない。娯楽小説としても楽しんで読むように書かれているのはたいしたものだと思う。この小説を読んでかつて私が高校時代に熱中して読んだ筒井康隆小説の読書体験をおもいだした。
小さな繰り返しと大きなスパンの繰り返しのはてに、「死夢」という外枠を最後に提示することで物語としてのまとまりが小説に与えられている。この「夢オチ」はとってつけたものに感じられない。収束点を与えられることで、読んでいてほっとしたような感じがした。筒井康隆も人生の晩年にいる。老齢になると「死」が己の主題として立ち現れるのは必然だろう。