劇とあそびのこどもまつり 2011
息子(5歳)と娘(10歳)と一緒に全児演主催の「劇と遊びとこどもまつり2011」というイベントに行った。去年からやっているイベントだが、今年は東北震災支援のためのチャリティ・イベントだとのこと。全児演に参加している劇団やパフォーマーたちによるヴァラエティー・ショーだった。
プログラム構成が違うので午前の部、午後の部の両方を見た。それぞれ8組のパフォーマー、劇団による演目が上演される。私がファンのパントマイムのチカパンも午後の部に出演した。
内容はクラウン芸、紙芝居、語り、人形劇、遊び、音楽劇など多彩で、それぞれが10分から20分程度の持ち時間で演目を上演する。出演する芸人、役者は子ども劇場などをおそらく主なフィールドとしているプロの演者たちだ。観客も子ども劇場関係の人が多そうな雰囲気だった。会場は幼稚園のホール。午前、午後の部とも100名ほどの観客でほぼ満員だった。
印象に残ったのは午前の部の金子ざんによる落語調の語り、「ひとつ目の国の話」。語りのスタイルは落語そのもの。お話はオリジナルなのだろうか?[古典落語「一眼国」という噺であることを人から教えて頂きました]。実に達者な話芸だったが落語家というわけではない。アフタフ・バーバン(http://www.afutafu-barban.org/index.html)という子供と遊ぶNPO組織のメンバーだとのこと。今回、語り芸は金子ざん氏以外もあったのだが、彼のものが圧倒的に面白かった。大人の私が聞いても面白かったが、5歳の息子もこれが一番面白かったそうだ。見世物小屋で騙された男の子が、見世物小屋の世界に魅了される。険しい山のなかにあるひとつめ小僧の村の話を聞いた彼は、そこに出かけ、現地でひとつ目小僧を一人拐かして、見世物小屋を始めようと目論むのだが、という話。
同じアフタフ・バーバンのメンバーの山内たいらさんは、「遊び」の推進役をやったが、こちらの進行も巧みだった。手遊びやしりとりといったシンプルな遊びなのだけれど、巧みな話術とゲームに取り入れたちょっとした工夫で子供と大人の観客を引きこんでいく技術が見事だった。午前と午後ではやるゲームを変えていたが、集団ゲームのバリエーションを相当数持っていそうな感じがする。
老舗の人形劇団、ひとみ座のメンバー二人による人形劇、『ふたりはともだち』は午前、午後の部の中入り前に上演されたが、細部まで演出が行き届いた非常に完成度の高い人形劇だった。原作は、かえるとがまが出てくる絵本である。人形の動きが素人目にもとてもしなやかで美しい。口をぱくぱくさせたり、目を閉じたり開いたりするぐらいの仕掛けしかない人形なのだけれど、表現のニュアンスが豊かなのだ。演者の表情や声色の工夫が、その人形の魅力をさらに引き出していた。
チカパンのマイムは五分ほどの短編だった。子供が多い会場だったので定番もので、ギャグが多いものを選ぶのかと思えば、叙情的で甘いバイオリン独奏曲に合わせた幻想的描写のマイムだった。月と鳥、そしてさまざまな海洋生物たちが、なめらかに自由にメタモルフォーゼしていくさまを、手の繊細な動きで表現していく作品である。子供にはちょっとしんどかったかも。マイムの世界に同調するには、時間不足でちょっと不完全燃焼のような感じもした。しかしどちらかというと賑やかな演出の多い作品のなかで、ほっとさせるような落ち着いた空気を作り出していたと思う。久々に見たチカパンのパフォーマンスだったが、彼女のマイムはもっと時間をとって見てみたい。
午前午後のそれぞれの部でトリをつとめた一糸堂&たまっ子座は、ジャグリング、アクロバットと太鼓などの打楽器を中心とする音楽演奏を組み込んだ音楽舞踊劇を上演した。オーストラリアのアポリジニの民話に基づく作品。演者の持っている技能を十全に活かすことのできる題材だったと思う。最後の太鼓演奏の迫力は圧巻だった。
子供向き公演なのでそれぞれ90分ほどの公演時間かなと思えば、どちらも休憩10分を含み2時間半近くあった。午前10時に始まり、食事時間40分ほどをはさんで、終演は午後4時前。ほとんど歌舞伎公演みたいな長時間観劇になってしまったが、演目がバラエティに飛んでいたため、長さはそれほど感じなかった。語り芸で寝てしまったところもあったのだけれど。
花小金井で子供と演劇、お話三昧の時間を過ごした休日となった。贅沢な時間の使い方をしたと思う。