青年団
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- 作・演出:平田オリザ
- 出演:山内健司、松田弘子、足立 誠、志賀廣太郎、天明留理子、木崎友紀子、兵藤公美、高橋 縁、大塚 洋、福士史麻、古屋隆太、田原礼子、村井まどか、山本雅幸、立蔵葉子、堀 夏子、石松太一、井上みなみ
- 劇場:吉祥寺シアター
- 評価:☆☆☆☆★
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今月は平田オリザの「ソウル市民」五部作の上映が吉祥寺シアターである。数年前に三部作を見た。今回は『ソウル市民』と新作二編を見る予定。
三部作ではいずれもソウルで長年商売を営む裕福な日本人ブルジョワ家庭の居間が舞台となっていた。今回の五部作で、この一族の三世代、30年が描き出される。『ソウル市民』では時代は1910年の日韓併合前に設定されている。
一家の主である父親は数年前に再婚した。前妻との間には一男、二女があり、同居している。この他、父親の弟(子供たちにとっては叔父さん)、書生一人、日本人女中二名、韓国人女中二名がこの家に暮らしている。95分ほどの上演時間の間に、この家の居間には父親の商売の相手でもあるらしい印刷業者夫妻、そして書生の学生時代の友人だという怪しげな手品師などが訪問する。
精緻に計算された会話のやりとりのなかから、支配者である日本人の朝鮮人に対する差別感情があぶり出される。非常に優れた戯曲だと思う。私は平田オリザの作品のなかではこの『ソウル市民』が一番好きかもしれない。上滑りの会話の白々しさのなかで、隠微な差別への快感がさりげなく、見事に表現されている。ただしこの一家の家風は当時としてはかなりリベラルなものであると設定されているのも周到である。展開に変化をもたらす展開に波紋をもたらす仕掛け投入のタイミングが実に巧妙だ。
芝居を音楽に例えるというのはよくある比喩ではあるけれど、平田オリザの作品の良いものはとりわけ音楽的なハーモニーを感じさせる。各登場人物のキャラクターや台詞が重なりあうことで、和声が響くように物語は膨らみ、奥行きを増す。