閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

びんぼう君

五反田団

  • 作・演出:前田司郎
  • 出演:大山雄史、黒田大輔(THE SHAMPOO HAT)、端田新菜(青年団/ままごと)
  • 劇場:五反田 アトリエ・ヘリコプター
  • 評価:☆☆☆☆
                        • -

二年ぶりくらいで前田司郎の芝居を観た。『びんぼう君』は七年前に上演された作品の再演だとのこと。登場人物は三名。タイトルどおり、ぼろぼろの服を着て、狭苦しい二畳間(?)に住む父と子、そこを訪れる息子の同級生の女の子。この家に母親はいない。父親に愛想を尽かして出て行ってしまったようだ。父親は執筆業っぽい感じがあるが、よくわからない。ずっと家にいるらしい。息子の誕生日に、学校の宿題である月の観察のために、息子の友達が何人かこのぼろ屋にやって来るというので、息子は興奮して舞い上がっている。しかしこの日が自分の誕生日であることは友達に伝えることができなくて、そのことを息子は気にしている。息子の父は、息子以上に舞い上がり、落ち着かない。やって来た友達はしかし女の子ひとりだけだった。それでも滅多にない息子の友達の訪問(それも女の子)に父親は躁状態になり、子供たちのなかに割り込んでいろいろとちょっかいを出す。息子はちょっと困った様子だけれども、女の子はマイペースな雰囲気でそれほど気にしている感じはない。
一角のみが照明で照らされた侘びしい空間での切ない日常風景のナンセンス。この父親の振舞いは、私とよく似ているところがある。六歳の息子にとっては特に、私は多分ああいうわけのわかんない人に違いない。『天才バカボン』のパパを連想した。見ていて切なくなる抒情的な(←意外にも)笑劇。最後の場面が心に残る。父親の奇矯な振る舞いによく笑ったが、私にとってはとてもシリアスな話に感じられた。見た後はしんみりした気分になった。