閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

映画 鈴木先生(2012)

http://www.tv-tokyo.co.jp/suzukisensei/

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マンガ原作版のクライマックスとなるエピソードをとりあげている。ただし学校演劇作りの過程はかなり削られていて、公園から疎外され、居場所を失った引きこもりの卒業生が逆上して学校に侵入し、ヒロインの女性生徒、小川蘇美を拉致するエピソードを中心に構成されている。

大人社会の欺瞞とグロテスクを中学生教室に凝縮させて、まっすぐ正面から格闘させるマンガ原作版の濃厚さは映画版でも受け継がれている。混乱の中でもがく登場人物たちの中心で輝きを放つスーパー女子中学生、小川の力強さと美しさは映画版でも印象的だった(ただしテレビ、映画版で小川を演じた土屋太鳳のルックスは、漫画原作から私がイメージしたものとはかなりずれる)。

 

演劇が物語の中で重要な役割を持っていることも嬉しい。『演劇 鈴木先生』も見てみたい気がした。鈴木先生役は、もし『演劇 鈴木先生』が実現するなら、松井周がぴったりはまるような気がする。『映画 鈴木先生』で鈴木先生が語る「人間はあらゆる役割をその日々のなかで演じる」事を説く演劇論に、想田和弘『演劇』の中の平田オリザの姿が浮かんできた。

 

足子先生役の富田靖子のはまりぶり、怪演に、若干複雑な気分だ。25年前、神戸新開地の映画館で、高校時代、友達3人で貸し切り状態で見た『アイコ十六歳』の残像がまだ残っているためである。