【第一日目 1/27(水)】
1/26から28の三日間にわたってSHIBAURA HOUSEで行われたフランス人劇作家・演出家のパスカル・ランベールのワークショップに参加した。
「都市を舞台に、すべての参加者が観察者/記述者/表現者となる。「みること」からはじまる都市ワークショップ」という惹句が魅力的で、その下にある説明もかっこいいのだけれど、具体的に何が行われるのかよくわからない。
ワークショップ初日の今日は、ウェブページの文章とほぼ同じ内容が口頭で説明された後は、何と3時間半ずっと参加者の自己紹介が続き、それで終わってしまった。
無料のワークショップでなかなか面白そうなのだけれど、日時的にどんな人が来るのだろうと思っていた。今日行ってみると学生、俳優、演出家、観劇人など世の流れからは外れたところで生きていそうな面白そうな人たちが集まっていた。知り合いも何名かいた。20名定員となっているが、50人の参加申込みがあったそうで、結局、今日集まったのは25名だった。今日は自己紹介(全員終わらなかった。10人ぐらいやっていない人がいる。明日やるらしい)、明日は自己紹介の残りを終えたあと、会場のSHIBAURA HOUSE(5階は硝子張りの開放的な作りでかっこいいビルだ)の半径500メートルぐらいを参加者がそれぞれ取材。明後日は取材成果を再構成して発表というスケジュールとのこと。しかしどのように何を取材するかは具体的な指示がなく、成果の発表についてもしかりという超フリーな形態なので、明日・明後日はどうなるかはわからない。
「ワークショップはこれまで時間がなくてほとんどやったことがない。うまくいくかどうかはよくわからない」。「自分の自由を他の人たちにも共有してもらいたい」と講師のパスカル自身が言っていたりする。とにかく町に出て歩いたり、佇んだりしながら、リアルを観察して、リアルをそれぞれが把握し、そのリアルの断片を再構成して作品として伝える、ということらしい。「見る、観察する、記録する、再構成する」。でもどうやって? それは各自が考えるらしい。
きっちりと構築された平田オリザのワークショップとは対極にあるいきあたりばったりの即興の連続のワークショップだ。4時間の時間をどう使うかとなると、普通ならプログラムを事前に組み立てておくものだと思うのだが。
「今日は時間がたっぷりあるから、一人一人じっくり自己紹介していこう!」ということで、最初の人の自己紹介で40分近い時間を消化。自己紹介の内容にパスカルがいちいち突っ込みをいれる。最初の青年はミニマル音楽を作っていると言ったら、「じゃ、その場でどんな音楽なのかデモンストレーションしてみて」と無茶振りされているし。さらに「あ、朝のおばあさんとの会話、それをできるだけ忠実にここで他の人に演じさせてみて」なんてことを要求されたり。えらいと思ったのは、この行き当たりばったりのパスカルの無茶振りを、振られた人がとにかくやってみせたことだ。「えー、無理ですよ」と拒否したりしない。
こんな奔放な突っ込みに誘導されたのか、参加者の自己紹介はほぼ初対面の人たちに対してかなりディープで深い内容になっていった。パスカルの行き当たりばったりの勢いに、思わず普通は人には自己紹介ではわざわざ言わないようなことを語るはめになっていくというか。こんな調子で自己紹介が進んで行ったので、25人のうち今日、自己紹介ができたのは15人だけで、あとの10人は翌日に積み残しである。何と言うことだ!でもパスカルは「これでいいのだ」と開き直った感じであった。
私の自己紹介はまだすんでいない。とにかくこの自由さに乗っかって、あとの二日、参加し、その様子を記録しておきたい。