閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

神戸より東京に戻る.風邪残り,依然,身体が重い.
歯のかぶせ物が知らぬ間に取れていてそこがしみる.あの金属を飲み込んでいると思うと気持ちが悪い.

連休中に読んだ本のまとめ.案外不作.そもそも風邪のピーク時には読書に没入する体力もなかったわけだが.

  • 岸本葉子『本棚からボタ餅』(中公文庫,2004年)

評価:☆☆☆
ISBN:4122043220
軽めの書評集.著者の淡々としつつ,誠実な人柄が文から伝わり心地よい.

  • 山田風太郎『あと千回の晩飯』(あさひ文庫,2000年)

評価:☆☆☆
父の書棚にあったもの.恬淡とした死への視線が魅力.

  • 本橋信宏『依存したがる人々』(ちくま文庫,2001年)

評価:☆☆☆
ISBN:4480036652
暗くて読後感が悪いドキュメンタリーではあるが,覚せい剤でトリップしたときの描写は迫真性がありひきこまれる.著者の精神の根本的な不健康さにかすかな拒否反応を起す.

評価:☆☆
ISBN:4480081054
社会学者のわりには皮相なフランス社会観察譚.サバティカル休暇での一年の滞在では仕方ないか.かかれた時点ではこの程度のフランス留学記が商品として本となりえたことに軽いショックを覚える.誰も彼もがフランスに留学できるようになったのは本当に最近のことであることを改めて思う.

評価:☆☆☆
ISBN:4122003660
体調がいいときだったらもっとおもしろかったかもしれない.文体のリズムに乗ることができず.江戸元禄期に老舗の材木屋を一代でつぶしたとんでもない浪費の記録.

  • 柏原兵三『長い道』(中公文庫,1989年)

評価:☆☆☆
ISBN:4122016517
藤子不二夫Aの傑作『少年時代』の原作.漫画のほうはもう何度も読み返した.原作の雰囲気を藤子が実に素直にみごとに漫画化していることを改めて確認.原作も読みやすい.

  • 山口文憲『読ませる技術:書きたいことを書く前に』(ちくま文庫,2004年)

評価:☆☆☆☆
ISBN:4480039201
「何を」書くかに特に重点を置いたエッセイ創作論.オリジナルな視点の重要さ,その配列の仕方の重要さを明確な方法論とともに述べた名著だと思う.ただこうした視点の問題は結局,書く主体それぞれの芸術的資質に負う面が多く,結局はあまり教育できない問題でもあるような気がする.
つまらない例のけなし方が秀逸で,何度も笑う.

  • 清水義範『目からウロコの教育を考えるヒント』(講談社文庫,2004年)

評価:☆☆☆
この人の教育論は本当に足に地がしっかりとついている感じがして,分析も的確だし,提言も具体的で有効性が高いように思う.現場の先生の間でちゃんと読まれ議論されてほしい.こうした分析的で明快で冷静な知性にあこがれる.