閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

お父さんのバックドロップ

中島らも(集英社文庫,1993年)
ISBN:4087480356
評価:☆☆☆☆

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普通からはかなりずれたへんなお父さんにまつわるお話を四編収録した小学校中学年から高学年向きの児童小説.「お父さんのバックドロップ」の原作がこんなに短くそして他愛のない短編だったとは! 映画の脚本への膨らませ方は実に見事なものであることがわかった.原作は児童小説だけに子供の視点から書かれており.深い心理の洞察のような描写はない.ただしリアリティあふれる会話にはらもの卓越した才気を感じさせる..この四編の児童小説はらもの精神の「まっとうな」部分を感じさせる佳作ぞろい.表題作の他,いつもへらへらとふざけてばかりいる落語家のお父さんの話とロックンローラーのお父さんの話は抱腹絶倒もの.しかもほんわかと暖かい心地よい読後感.会話にうそくささがないのだ.とぼけていつつも,徹底的におふざけに走るお父さんの姿にお父さんの本当の思い,子供への感情を読み取ることはできるし,子供の側からのお父さんへの信頼感も巧みに表現されている.児童文学の傑作.娘が大きくなったら読ませてみたい本.