小田中直樹(文春文庫,2005年)
ISBN:4166604279
評価:☆☆☆
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僕より4歳年上の社会経済史研究者による一般書.フランス語授業のネタ探し.
ある程度知的な日本人がフランス社会に身を置いたときに感じるだろう違和感を7つのテーマにしぼって解説.政教分離の問題,ストライキ,言語的多様性,農業問題,反米主義,超エリート社会,移民問題などテーマの選び方はなるほどと思うが,著者は出自が歴史学者だけあってやはり「文献」の人である.これらのテーマの解説も歴史的視点から掘り起こす「悪癖」があり今ひとつ面白くない.もっともこの点にこの啓蒙書の特徴があるといえばあるのだけど.説明の仕方ののりがよくないし,テーマによっては著者の歴史的な説明が,必ずしも現代フランス社会にみられる現象に感じる違和感をすっきりと説明できていないように感じられる.各章末の「読書案内」は役にたちそう.
著者自身のフランスへの愛着などもあって,今ひとつフランスをつきはなして書けないところもあるようだ.その舌鋒の生ぬるさゆえに物足りなさを感じる.フランス人なら遙かに辛辣に日本社会を皮肉るだろうに.たぶん著者は「いい人」なのだと思う.記述がときに過度に謙虚ではったりがないのに好感を持つ.