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日常でふと感じるような些細なひっかかりにこだわることで,日常の裏側にある未知の世界の闇へ導いてくれる北尾ルポルタージュの傑作.2001年に出た鉄人社刊行の単行本版を僕は発刊当時に読んでいたが,久々に読んでみてもとてもおもしろい.「電車の中で知らないオヤジに話しかけ飲みに誘う」「好きだと言えなかったあの女性に23年のときを超えて告白する」「母親に恋愛時代の話を聞く」など,日常生活のなかでふと妄想にふけることはあるけれども,日常性突破の勇気がないために(あるいはその必要性を感じないために),そのままにほったらかしにされるような事柄が,この本の中でおずおずと実行され記録されている.ここで選ばれた「タスク」の選択に,ある種のひとびと(僕も当然含まれる)は,たまらないセンスを感じるはずだ.卑小ながらも大きな勇気な必要な挑戦の数々は,その実行に至るまでのもだえるような激しい葛藤も含め,抑制の利いたバランス感覚のある文章でつづられている.過去の自分の行為の瘡蓋をどきどきしながらはがす感覚を共有できる,第4章センチメンタルジャーニーが個人的には一番好き.高校時代好きだった女の子に23年後に告白に行く「タスク」の甘酸っぱい叙情性は優れた青春小説を読むような味わいがある.