閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

12の月のたき火

http://www.puk.jp/calender.htm

作・演出プラン/川尻泰司
演出/長谷詔夫
美術/中山杜卉子
音楽/長沢勝俊
照明/飯島隆
舞台監督/佐藤達雄
制作/井上幸子
出演:佐藤達雄・早川百合子・原山幸子・市橋亜矢子・栗原弘昌・山田はるか

  • 劇場:新宿 プーク人形劇場
  • 上演時間:1時間20分(休憩15分含む)
  • 評価:☆☆☆☆
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今年最後の観劇.五歳の娘といっしょに.
71年に初演され,75年以降毎年クリスマスの時期に上演されているプークのレパートリーの中でも定番中の定番になるだろう.素材はスロバキアの民話.
糸繰り人形が中心だが,人形は120センチぐらいの大きさのかなり大型のもの.素朴さを強調した人形の造型と民族衣装がとても可愛らしい.意地悪な母・姉のいじめ,主人公の娘のけなげさと誠実さ,王の無理難題,娘と森の深奥に集う神々の邂逅,神々の奇跡,娘の恋の成就,勧善懲悪の結末といった民話の定型的要素をふんだんに用いた物語.夜の森の深奥での神々の宴会の神秘性・幻想性の表現の巧みさや母・娘の不条理ないじめ,王の命令で娘がむち打たれるといった残酷で悪趣味な場面もしっかりと提示されていることに感心する.音楽の選曲と使用法の洗煉と美術が作品の叙情性を引き立てる一方,登場人物の内面描写は最小限で展開は叙事詩的である.民話的ご都合主義や残酷性の提示は,素材の民話の持つ民話性の生々しさ,非近代的な非合理性をできるかぎり保持していこうという作者の意図があるように思えた.こうした解釈は,定型的でシンプルな物語に奥行きを与えていた.