寿初春大歌舞伎 夜の部
長唄舞踊.三部構成になっていて,最初が扇を使った小姓弥生の優美な舞踊,弥生が花道から退場すると,二人の子役の胡蝶の精による愛らしい舞踊が間に入り,最後は獅子の精の勇壮な舞踊と胡蝶たちの舞のからみ.曲もかっこいいし,舞踊も変化と動きに富んでいてとても面白い.第二部から第三部へ移り変わる部分の演出が劇的.三味線による早弾きが終わった後,鼓と太鼓が鳴りはじめ獅子の精の出を待つのだが,その鼓と太鼓の無音のためをたっぷりとっているのだ.愛らしい胡蝶の舞の子役が退場して観客席はしばらくざわめきが残るのだが,この無音のために緊張感と期待が高まる.客席全体が息を飲むようすが伝わってくるような心地よい無音状態だった.次第に鼓と太鼓の間隔が狭まり,観客の高揚感がそれとともに高まっていく.そしてまさに「待ってました」とばかりに獅子の入場.はじけるような拍手と歓声がわきあがった.非常に爽快な後味の舞踊劇だった.