閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

出雲の阿国

前進座公演
http://zenshinza.com/stage_guide/okuni/okuni_index2007.htm

原作:有吉佐和子
脚色:津上忠
演出:鈴木龍男
装置:小南由紀
照明:森脇清治
音楽:川崎絵都夫
振付:吾妻寛穂
衣裳:伊藤静夫  
出演:妻倉和子(阿国)山崎辰三郎(伝介)高橋佑一郎(三九郎)今村文美(お菊)

  • 上演時間:3時間5分(休憩20分含む)
  • 劇場:吉祥寺 前進座劇場
  • 評価:☆☆☆★
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有吉佐和子の小説の舞台化.
客席通路を花道のように使い,阿国一座の公演の場面では現実の客席と舞台上の世界が混然となる演出もスムーズに導入されていた.
津上版「阿国」は前進座のレパートリーの一つだが,今回の公演(前回の2002年公演から?)では振付,音楽,美術は新たに構想されたとのこと.踊りの伴奏音楽はともかく,シンセサイザーを使ったBGMとしての舞台音楽が安っぽく興ざめしてしまう.ゲーム音楽みたいだった.象徴的図案的美術と写実的美術が中途半端に混在する美術もインパクトに乏しい.最初とラストではスモークが使われるが,幻想味を出したい場面の美しさも今ひとつ.紙吹雪もどうせ使うなら,秋の新国立での鈴木忠志演出の『シラノ』のラストのように盛大に使って欲しかった.
津上忠志の脚本は長大な原作をうまくまとめていて話の展開のテンポがいいが,人物の造型に奥行きが乏しい.三九郎とお菊,九蔵といった悪役が平板なので,主役の阿国も映えない.阿国は徹頭徹尾いい人すぎて,芸能者としての狂的な部分,悪魔的な部分がほとんど描き出されていないのにも不満を感じる.伝助との悲恋を物語の軸にするのならば,もっと徹底して通俗的なメロドラマに仕立ててもよかったように思う.全般に散漫な印象.
役者の演技は全般に通俗味の強い大衆演劇的な味わいに流れる.伝助役の山崎辰三郎の演技の臭みには閉口.阿国役の妻倉は熱演ではあるけれど・・・ 伝助,阿国とも役のコンセプト作りが難しいところだが,演出家のねらいがよくわからなかった.
三九郎役の高橋佑一郎のクールさはもっと生かして欲しかった.そのほか印象に残った脇役は,達者な関西弁で愛嬌ある存在感を示していたまめ役の柳生啓介,そしてお松を演じた黒河内雅子.この女優のきわめて個性的な顔立ちはとても印象的.独特の不美人.彼女の顔立ちと演技は,屈折した心情で阿国と伝助の愛を見守るお松という特異なキャラクターを印象づけていた.
しかし「冒険」精神に欠ける中途半端な舞台,期待が大きかっただけに若干失望感を覚える.演出における大衆性の強調は客層を考えると必ずしも失敗とは言い切れないだろうが.実際客の反応はかなりよかった.