笠井潔(講談社文庫,2000年)
評価:☆☆☆★
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手に取った者を死の衝動に駆り立てるという呪いの書物『梟の巨いなる黄昏』の周辺にいた四人の人物の心理を描くホラー・ミステリー.幻の書物という道具立てに興味をそそられるが,殺人衝動のキーとしてはいかにも作り事めいていて,それゆえ最終章のリアリティを若干削いでしまっている.
硬質な文体での描写がしぶい.客観的観察を積み上げて構成されるクールな心理描写の巧みさに引き込まれる.
特に第一章,破滅型私小説家のグロテスクなパロディともいえる三流小説家の生態描写はいかにもリアルで,この荒廃した小説家と多かれ少なかれ似た状況にある我が身にとって「身につまされる」ものがあった.