閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

理由

107人の人物の証言で構成された異色作.一つの殺人事件の真相解明を巡る周囲の人間たちの証言によって,その事件の核心のみならず,語り手の背後にあるそれぞれの人生のあり方をひっそりと照らし出される.
原作は数年前に文庫化されたおりに読了済みだったが,映画を観るまで内容のほうはすっかり忘れていた.映画はルポルタージュ・スタイルの原作の方法をできるだけ忠実に映像化したもの.人間関係の連鎖の中で,徐々に間接的な形で浮かび上がってくるそれぞれの生活史の姿が,作品に深い陰影を与えている.
ラストの安っぽい効果を使った「幽霊」のシーンは蛇足だと思ったが,証言のみという構成にも関わらず単調にならずに事件の闇の深さに知らず知らずのうちに引き込まれてしまった.傑作.全編通して流れる音楽も主張しすぎず(エンディングの音楽の歌詞は「やりすぎ」だぁ),作品の情感をたくみに引き出していた.
事件のキーパーソンの一人,伊藤歩(可愛い!)に強い存在感を感じる.
氷雨降る寒い日であったが,ユナイテッド・シネマとしまえん,またしてもがら空き.予想していた事とはいえ,快適な映画館だけにつぶれてほしくない.土曜のオールナイト企画にはけっこうお客が入っているのだろうか?