佐江衆一(新潮文庫、1999年)
評価:☆☆☆☆
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老いていく両親に、老いに入りつつある自身がどう向き合っていくかについて現実的な観点からのヒントを得る事ができたように思う。
作者の分身であると思われる男性の主人公の心理と行動および倫理は、内省的・分析的ではあるものの、崇高であるというよりは凡俗的・非概念的であるがゆえに、大きな共感を覚える。老母、老父に対して、幼児に対してであるように「カタカナ」で語りかけるセリフのリアリティーに切なさを感じる。
祖母が脳梗塞で倒れて以来、痴呆状態で介護施設に入院し、かつての指導教授はおそらくアルツハイマー性痴呆で閉鎖病棟で過ごしている。私の両親も70に近くなり、妻の母は既に死去して耳のすっかり遠くなった義父が一人暮らしをしている。老人介護の現実は僕のすぐ目の前にある。そうした時にそういう現実にどう向き合っていくのか、そうした事態に対する現実的な心構えをこの小説から学んだ感じだ。