- 演劇集団キャラメルボックス
- 作・演出:成井豊、真柴あずき
- 音楽:河野圭
- 照明:黒尾芳昭
- 美術:キヤマ晃二
- 衣装:三大寺志保美
- 出演:岡田達也、上川隆也、大内厚雄、岡内美喜子、細見大輔
- 劇場:池袋 サンシャイン劇場
- 評価:☆☆☆★
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超満員の劇場。
今回の公演は観客のリクエストに基づく再演。原案は山本周五郎の短編小説ということ。そういわれてみれば確かに人間関係の描かれ方は周五郎の香りがする。
仲間を裏切る若い下級武士を人気俳優の上川が演じる。群像劇の側面はあるものの、ドラマの中心はこの裏切りをおこなった下級武士の葛藤におかれるべきだろう。しかし長年つきあってきた仲間を卑劣に裏切らざるを得なかったこの人物の屈折や裏切りにいたる契機が説明不足であるように思えた。20年前に汚名を着せられた親の名誉を挽回するため、という言葉の説明だけでは弱い。脚本はこの人物の葛藤にもっと焦点化すべきであるように思った。「Truth」というタイトルに用いられた言葉の使われ方も劇中ではあまりに形而下的であり、象徴的な喚起力に乏しい。最後のシーンが露骨に教訓・道徳的に感じられるようになってしまった。音楽の使い方、選曲センスは、前回見た『スキップ』でも感じたことだが、僕の好みとは大きく異なる。
道場、藩屋、家老宅など劇中のすべての空間をかねる板張りの舞台の造形とその利用の仕方、時間軸を前後させることで殺害のシーンのクライマックスを後半冒頭に配するエピソードの配置の仕方など、演劇的仕掛けの使い方は『スキップ』同様非常に巧み。展開のなかでの緊張と緩和のリズムはよく計算されていて、前半最後のダレ場のあとに謎解きとなる殺害シーンをおくことで一気に緊張感を高める構成は見事だった。