閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

アイコ十六歳

富田靖子と僕はほぼ同年代で,富田靖子のデビュー作であるこの作品を僕は高校時代に神戸の小さな映画館で観たのだった.友人三人で観にいったのだが観客はわれわれだけの貸しきり状態.映画が終わった後,貸しきり状態になぜか興奮したわれわれは映画館の中を走り回ったことを覚えている.

今見ると耐えられないほど作り物めいていて,台詞や富田靖子の表情一つ一つが気恥ずかしい.富田靖子も今見るとあまりかわいくはないのだが,当時の僕には本当に理想的な美少女にみえ,またこのような甘く青臭さがぷんぷん香る青春物語をひそかにかつ熱烈に憧憬していたのであった.人生経験がないというのは恐ろしく恥ずかしいものだ.
この映画自体は,タイトルを含め今では耐えられないような気恥ずかしさには満ちているが,主人公のアイコの「至らなさ」や富田靖子のわざとらしい表情を含め,高校生の幼い現実の空気を的確に表現しているように思った.
私の妻はこの「アイコ」のようなタイプだったのではないかな,とふと思う.