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日本思想史の研究者による歌舞伎の啓蒙書.1974年の刊行.「です・ます」調の文体と強烈な自負心を感じさせる記述の力み具合のアンバランスが,今読むと滑稽に感じられることもあるが,コンパクトながら歌舞伎劇の演劇的特徴が分析的に考察された上で,体系的に整理されている.抽象的・理論的部分と具体的な作品紹介のバランスがよい.説明はきわめて論理的.歌舞伎劇の演技,音楽,脚本,舞台装置について,歌舞伎の演劇的特質とからめてわかりやすく説明されている.
この啓蒙書で提示された歌舞伎劇の特徴は,近代以前の西洋劇のありかたと共通する部分が多い.非・近代西洋劇として歌舞伎と中世劇の発想は案外近いところにあるのではないだろうか.中世劇の特質を考える上でも,この小著の記述には啓発されるところが思いがけず多かった.