閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

電車男

http://www.nifty.com/denshaotoko/html/main.htm

  • 場所:東武練馬 ワーナーマイカル板橋
  • 評価:☆☆☆★
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別の作品を見るつもりで映画館に行ったのだが,上映時間に間に合わず.そのまま帰るのもつまらないので,一時間ほどの待ち時間で上映がはじまるこの作品を見ることにした.
原作は出版直後あたりに購入して読了した.恋のせつなさ,胸のしめつけられるような感じがリアルに表現されている原作はとても楽しんで読んだのだ.その後,様々な暴露や嘲笑,朗読劇化などの「大衆化」により,「電車男」神話が陳腐化していくにしたがい関心を失っていったのだが,今回の映画化,やはりちょっとは気になっていたのである.
とはいうもの,神話の勢いが残っているうちにというみえみえの計算に基づく商品化に乗っかってしまうのは気恥ずかしかったし,自分が「毒男」と見なされるのも抵抗があった.
いつもがらがらのマイカル板橋だが,電車男は8割の入り.珍しい盛況である.観客はほとんどが若いカップルのようだ.私のような電車男さながらの毒男もちらほら.
映画自体は思いの外愉しめた.電車男エルメス毒男たち毒女たちを,うまく類型化することで,この物語の現代秋葉男版「シンデレラ」的性格,恋愛ファンタジーとして説得力のある表現に変換していた.確かに原作を読んだときから,エルメスは,現実のモデルがいるというより,いかにもある種の男たちの願望が露骨に投影された偶像的女性像であるような感じがしていたのだ.恋愛の切なさと緊張感,それが報われるときの幸福感は,リズムよく表現されていて,カタルシスを味わうことができた.この題材の醍醐味はやはりこうした恋愛にちゃちゃをいれる観客たちの感情移入ぶりの強烈なリアリティだと思う.虚構か真実かはわからぬところがあるけれど,同時進行形でこの物語の進行を見守っていた「観客」たちの興奮ぶりは想像できる.


中谷美紀は猿顔であるけれども,やはり独特のオーラをもったこちらを身震いさせるような美人だ.声も非常にしっとりとした響きで美しい.エルメスのような偶像的女性像にはぴったりのように思えた.
看護婦の2ちゃんねらー役としてでていた国仲涼子のめがね姿もおそるべきかわいらしさで,脇役にもかかわらず存在感を発揮していた.