閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

歌舞伎鑑賞教室 義経千本桜:河連法眼館の場

  • 作:竹田出雲,三好松洛,並木千柳
  • 監修:市川猿之助
  • 出演:市川右近市川笑也,市川猿弥,市川断治郎
  • 劇場:半蔵門 国立劇場 大劇場
  • 評価:☆☆☆★
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先月の『毛抜』に続いての歌舞伎鑑賞教室.劇場内は学生でいっぱい.解説歌舞伎のみかたは,市川笑三郎と市川春猿の二人が案内役.先月の亀三郎の解説は歌舞伎の様々な舞台上の約束事や小道具,大道具の説明が主だったが,今回は歌舞伎音楽の解説が中心.観客を舞台に上げるという先月観られた趣向はなかった.観客の拍手やかけ声を盛んに促していたけれど,今日の学生は今ひとつのりが悪く,盛り上がりは不十分だったのは残念.本編上演中も「大向こう」はあまりかからなかった.「ヒロシ」の物真似を入れる,ダイジェスト版の上演など,若い観客の関心をひきつけるための工夫はあったけれど,構成自体は前回のほうがバラエティに富んでいて楽しめたように思う.この手のやりとりは観客の質も重要.6月は女子中学・高校生中心だった.女性観客のほうが反応が素直であるように思える.
「河連法眼館」は五月の勘三郎襲名公演でも観た演目.今回は猿之助監修で,早変わり,宙乗りなどのスペクタクル性の高い仕掛けに満ちた演出.サービス精神に満ちた舞台はもちろん十分に楽しめるものではあったが,僕には五月の菊五郎のより「古典的」な型のほうが退屈しなかった.五月ははじめての古典歌舞伎体験ということで新鮮度は大きかったのだが,それだけではないと思う.右近の「狐」は可愛らしいのであるが,「けれん」の派手さゆえに筋書きの荒唐無稽な面白さが後退してしまった感じ.もっとも最後の「宙乗り」を筆頭に,視覚的な面白さに富んだ舞台ではあるのだけれど.