閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

人間臨終図鑑1

山田風太郎(徳間文庫,2001年)
ISBN:419891477X
評価:☆☆☆☆★

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3巻に分かれた文庫版.第一巻は15歳から55歳で死んだ歴史上の人物の死に様.年齢別に死に際を簡潔に描きつづるという企画は秀逸.風太郎の小説はいまだなじめないところがあるが,こうしたノン・フィクションとは相性がいい.風太郎の淡々とした筆致と短いコメントが主題とうまく調和している感じがする.
人の死に様にまだ立ち会ったことはない.自身は心筋梗塞で死にかけたことはあるけれど.死に様は多様なようで代わり映えもしないよう気もするし,その逆のようでもある.いずれにせよ娘を見ていると,無垢というありふれた形容そのままに見える乳幼児が,歳経るにつれ多様な姿に成長していくのは,当然とはいえ,いまだ奇妙に思われる.
案外多くの有名人が若くして死んでいるのに少し暗澹たる気分になる.現在の僕と同年で死んだ有名人は,楊貴妃ラファエロビゼーゴッホロートレック宮沢賢治,じぇらール・フィリップ.偉業をなした人物にも寂しい死に際の人物が案外多いことにほっとしたような気分.
僕も寂しく死ぬだろう.