閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

2005イタリア・ボローニャ国際絵本原画展

http://www.city.itabashi.tokyo.jp/art/bologna/index.html

区立美術館のイベント「親子で楽しむ絵本の時間」に4歳半の娘と参加。一時間半ほどの時間を使って、使用済みのポスターの裏側白紙を使って、マーカーと折り紙の貼り絵で4ページの絵本を作る。娘と一緒に作るつもりだったが、親子にそれぞれ一組づつ用紙が配布されたので別々に作った。マーカーの発色がきれいで、ポスター裏側の上質光沢紙によく映える。小・中学校時代の図工の時間の感覚。時間は瞬く間に過ぎる。娘は架空の家族で過ごす夏休みの4場面を絵本にしていた。僕は歌舞伎座にバイクで向かっている途中で警察に捕まって切符を切られてしまう話。
絵本制作後、開催中の国際絵本原画展の展示を見る。子供は学芸員の説明を聞きながら数編の作品を鑑賞。3−5歳のうるさい盛りの年齢の子供ばかりなのにおどろくほどみんな静かにお話を聞いている。僕はその間に会場を一周。
言葉からイメージを含ませ、数葉のシークエンスで表現する絵本の世界は、当然のことながら、一枚絵のタブローとは全く異なった世界を提示していることを改めて確認する。技法も多様で、内容も必ずしも子供向けのものばかりではない。優れた叙情的感性を持つ作家は、ことばと図像の間に生じる緊張関係に敏感であり、説明的な表現にならないように気を配っているように思う。絵によって表現したい情報をあえて制限することによって、ことばとの相乗効果でさらに豊かなイメージの生成を鑑賞者に委ねている。

14世紀末から15世紀末の挿絵写本は現代の絵本と感覚的にかなり近いものもあるように思う。有名なマルコ・ポーロとマンデヴィルの東方紀行を収録する挿絵写本(Paris, BnF, fr. 2810)の図像とテクストの緊張関係など、非常に「絵本的」に思える。挿絵画家は、テクストに書かれた東洋記述から当時の図像上の慣習をふまえつつも、想像力を働かせて独自の表象を描き出している。

絵本原画展は個人的な記憶を引き出した。ボローニャで開催されている国際絵本原画展を最初に日本で行ったのは西宮の大谷美術館だった。父、母、弟と家族全員で何回か絵本原画展を観るために大谷美術館に行ったことを思い出す。美術館内部の構造も何となく頭に思い浮かぶ。弟と二人でかなり退屈を感じながら、父母が見終わるのを待っていたことも。