閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

亀は意外と速く泳ぐ

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「脱力系エンターテイメント」というコピーから窺える作品の狙い所にちょっとした拒否感を感じて、観に行こうか行くまいか迷った作品。「不条理な笑い」と称した内輪受けしかねらっていない独りよがりのギャグ満載の映画であることをおそれたのだ。
上野樹里蒼井優という今の僕にとっての二大若手女優の共演作であることに惹かれ鑑賞することに。上野樹里を全面的にフィーチャーした作品で、彼女のかわいらしさは満喫。蒼井優は脇役に甘んじていたが独特の存在感は示していた。ふせえり、若松了、温水洋一といった濃厚な「小劇場」雰囲気を持つ役者たちが脇を固め、映画を特有の香りで満たす。
主人公である若い主婦の極めて退屈そうで平凡な日常に、ある日突然、荒唐無稽な非日常がどんどんと侵入してくる。主婦はそうした非日常的な出来事に抵抗や拒否反応を示すことはなく、ごく「日常的に」受け止めていく。平凡な背景の描写のディテールにも気を配った丁寧な演出もあり、オチの曖昧なギャグの連続は効果的に表現されていたように思う。少なくとも僕の笑いの波長には合った。つまらない小さいネタのギャグばかりだが、30分もすると鑑賞しているこちらの脳内も麻痺してきて、ついつい反応してしまう。
ロケ地のいかにも味のない退屈そうな田舎ぶりもすばらしい。
思いの外楽しんだけれども、はり狙い所にはある種の「臭み」もぷんぷん漂う作品。キャスティングのうまさとバランス感覚ある演出でねらいのえぐみがよい具合に抜けている感じ。