閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

シルミド

http://www.amuse-s-e.co.jp/silmido/

  • 評価:☆☆☆★
                                                    • -

死刑囚を孤島に集めて、金日成暗殺部隊として訓練するという、冒険小説さながらの事実に基づく映画作品。金日成暗殺計画計画は政治的判断によって中止されたため、部隊の存在は宙に浮いたものとなる。映画の設定では政府は部隊員を虐殺することでこの計画を闇に葬ろうとするが、部隊の訓練兵はそれを察知。反旗を翻し、激しい戦闘を戦い島を脱出し、バスを乗っ取ってソウルの大統領官邸に向かう。しかし官邸到着前に軍に包囲されてしまい、結局は集団自決する。
訓練兵の脱走という事件も実際にあったそうだ。24名が脱走し、その多くは手榴弾によって自決。生き残った四名の訓練兵士は後に死刑に処されたとのこと。

その荒唐無稽さゆえに、悲劇的でありながら喜劇的、笑劇的にも思える事件である。映画化にあたっては、この重苦しい事実をアクション娯楽大作の様式で映像化している。前半は島での訓練生活の描写と作戦出動とその中止までを、後半は作戦の中止による部隊の退廃から政府軍との戦闘を描く。展開のテンポがよく、濃密な各エピソードをもたつくことなく上手に提示している。計算されすぎているようにさえ思える構成と絵作りゆえに、作品の雰囲気に重量感が乏しい。戦闘場面なども「うますぎる」感じ。音楽のセンスは古くさく感じられた。最後の自決シーンは意外性があって強い印象を与えられた。エンディングも「定式的」だが余韻を残すもの。全体的にはあまりにも「教科書的」な意味で完成度が高いように感じられ、娯楽作としては成功しているように思うものの、物足りなさを感じる。
主役のソル・ギョングはしぶさはいかにも韓国的。しかしこの主役とチョ・ジョエン演じる訓練兵がとにかく「英雄」ぽすぎるのだ。脚本は娯楽性を優先したためか、リアリティに乏しく思えるところが多かった。