閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

サマータイムマシン・ブルース2005

  • ヨーロッパ企画
  • 作・演出:上田誠
  • 美術:酒井善史、角田貴志
  • 照明:松谷将弘、大川味央
  • 衣裳:西村直子
  • 出演:中川晴樹、石田剛太、酒井善史、諏訪雅、永野宗典、清水智子、本田力
  • 劇場:下北沢 駅前劇場
  • 評価:☆☆☆☆
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作・演出の上田誠はまだ26歳、そして劇団メンバーもほぼ同年代。劇団の前身は同志社大学の学生劇団だとか。
題材こそありふれた「タイムトラベル」ものではあるが、緻密な構成の脚本でちりばめられた数々の伏線が見事にすっきりとつじつまがあうように収斂されていく様子は鮮やか。登場する各人物のキャラクター設定も丁寧でリアリティあるものであり、役者の演技はうまくそのキャラクターに乗っている。ぼけ役の役者がいずれも達者で、上手に笑いをとっていた。自然なリズムの口語体の会話も心地よい。
よく練られた構成の脚本の洗練された感覚と芝居のリズムの心地よさに感じる演出・作者の非凡さに驚嘆。しかしそのこれみよがしに才気走ったところが少々ひっかかる。「その賢げなところが気に入らないんだよ」という劇中人物の台詞があったけれど、この芝居の破綻のないスマートなところに感じる不満はまさにこんな感じである。「小賢しいまねしていい気になりやがって」と因縁つけるみたいなかんじになってしまうが。
三谷幸喜の作品やこの前見た『運命じゃない人』のセンスと似たところがあるように思った。
この舞台は映画化され、上野樹里主演で9月上旬から公開される。映画版には今日の舞台にいない登場人物も出てくるので、脚本はかなり変えているのかもしれない。映画版脚本上田誠。今日観た感じでは舞台特有の「ウソ」は少なかったが、映画版で舞台の雰囲気がどう変換されているのか楽しみだ。
今日演じた役者はみな達者で、特にぼけ役役者には笑わされたが(間の取り方とか、膝を打ちたくなるようなリアリティあふれる日常性の中の突飛さの表現が可笑しい)、ヒロイン役(?)の清水智子は大柄で可愛らしい美女だった。
下北沢駅前劇場は桟敷もびっしりうまる超満員。2300円という格安の料金設定もすばらしい。