閑人手帖

このブログは私が見に行った演劇作品、映画等の覚書です。 評価、満足度を☆の数で示しています。☆☆☆☆☆が満点です。★は☆の二分の一です。

SHIROH

http://www.shiroh.jp/

昨年末に帝劇で観た作品を、ゲキ×シネ版で再見する。SHIROHは僕が観たはじめての新感線の作品だったが、島原の乱に題材をとったこの作品の世界観の薄っぺらさと演技人の歌唱力に若干の幻滅を覚え、あまり高く評価できなかった。新感線に対する認識はその後4月にゲキ×シネという形態で『アオドクロ』を観て肯定的な方向に完全転換する。それで今回のゲキ×シネ版での『SHIROH』再見となるわけである。
上演時間正味3時間20分。新感線にとって最初の本格的ミュージカルであるこの作品の完成度が発展途上のものであることは、演出家のいのうえひでのり氏自身も認めているが、特に前半部は冗長に感じられるダレ場が多く、眠りに落ちそうになることも。クライマックスのSHIROH殉教とキリシタンの敗北の場面はドラマティックに盛り上がったが、伊豆の守の現実主義的な「知」とキリシタンの無垢に含まれる愚かな「無知」の対立など、劇中にあるさまざまな対立軸の絡み合いをもっと明瞭に示すことができれば、展開ももっと圧縮されたものになったように思った。キリシタンの敗北が、幕府軍の攻撃や戦略よりもむしろ、信徒集団内部の信仰に伴う潔白で素朴な精神と集団心理による極端への暴走と組織の未熟さによってもたらされた自滅的なものであることが、劇中で暗示されていることを今日の鑑賞で気づく。それゆえキリシタンの敗北はいっそう悲劇的なのだ。
中川晃教の歌は悪くないけれど、ビブラートのかけ方に違和感を持つ。これがミュージカル・スタイルなのだろうか。好みの問題ではあるが、私は好きではない。上川隆也の歌も悪くない。この俳優の男臭い格好良さをようやく認識。スピード感・躍動感あふれる殺陣も見事。
『アカドクロ』もまたゲキ×シネで再映されないかなぁ。
新感線新作『吉原御免状』、チケットとれぬまま。うーん、これも観たいなぁ。