http://www.alles.or.jp/~rinkogun/permanentway.html
燐光群公演
- 作:デイヴィッド・ヘアー David Hare
- 訳:常田景子
- 演出:坂手洋二
- 美術:加藤ちか
- 照明:竹林功
- 衣裳:前田文子
- 出演:渡辺美佐子、中山マリ、鴨川てんし、川中健次郎、大西孝洋、江口敦子
- 劇場:三軒茶屋 シアタートラム
- 評価:☆☆☆★
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
- -
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
イギリス鉄道が1994年に100以上に分社・民営化された直後の数年、死者の出た大きな鉄道事故が立て続けに起こった。この劇はこの鉄道事故の被害者遺族、助かった乗客、議員、弁護士、鉄道会社幹部の一連の事故に対する反応を劇的にただし写実的な表現で再構成したもの。
二時間十分。タイトルの「Permanent Way」は直訳すると「永続する道」だが、イギリスの鉄道用語で「軌道」の意味もある。タイトルは、皮肉なニュアンスを伴って、両方の意味がかけられているのだろう。
組織が人間をいかに無責任に無感覚にしてしまうか、そうした組織的対応によって遺族はいかに尊厳を傷つけられるのかが、演劇的に再現されることで追体験することができる。事故の記憶からできるだけ遠ざかり、鉄道会社と妥協的な姿勢を取ろうとする生き残った乗客と、あくまで鉄道会社と政府の責任を追及し対立を深めていく遺族が、しだいに協調できなくなっていく様子もしっかりと描かれているのも興味深い。対立軸は錯綜している。
シアタートラムの内部は、合流して一本になる鉄道軌道と鉄道軌道に沿って張られている鉄条網によって、客席が左右に分断されている。鉄道軌道は写実的に再現され、レールだけでなく、道床・枕木も備えられている。
被害者の遺族、母親を演じる渡辺美佐子が突出した存在感を示す。どちらかというとあくのあるしつこい演技をする人が多い燐光群の役者の中で、渡辺美佐子の演技はさらりとした感じなのではあるが、観客の注意の喚起力が強いのだ。
遠く離れたイギリスの鉄道の話なのだが、この春、伊丹で大量の死者を出した脱線事故があったばかりで、劇で再現される状況、鉄道会社や政府の無感覚さ・無責任は非常にリアルに感じられる。伊丹事故の背景ではこうした人間不信・社会不信を深めるような闘争が続けられているのだろうか。そして今、話題になっている建築問題をめぐる組織の対応も、この芝居から想起される。こうした事態に、被害者としてあるいは加害者として関わる可能性は決して低くはないのだ。そうしたときにどういった態度をとりうるのか、ということを考えさせる政治的・啓蒙的な内容の芝居だった。坂手洋二演出には、社会性よりその表現の叙情性を好む僕としては、あんまり愉快なお芝居ではなかった。こういったテーマにまともにとりくむ姿勢には共感すれけれど、やはり「正しい」主張はちょっとうざったいところもあるのだ。