燐光群
http://www.alles.or.jp/~rinkogun/Next.html
- 作:ダグ・ライト Doug Wright
- 訳:常田景子
- 演出:坂手洋二
- 美術:島次郎
- 照明:竹林功(龍前正夫舞台照明研究所)
- 音響:島猛(ステージオフィス)
- 衣裳:宮本宣子
- 振付協力:矢内原美邦
- 出演:猪熊恒和 中山マリ 鴨川てんし 川中健次郎 樋尾麻衣子 杉山英之 伊勢谷能宣 松岡洋子 西川大輔 鈴木陽介 橋本浩明 桐畑理佳 矢部久美子 渡辺文香 横山展子 根兵さやか
- 劇場:吉祥シアター
- 評価:☆☆☆☆
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2004年にピュリッツァー賞、トニー賞などを受賞した作品。オリジナルは一人芝居だったそうだが、燐光群版では16人の役者によって一人の人間を描き出す。主人公は作者のダグ・ライトが取材した実在の人物、ベルリンの戦中戦後を生きた女装者シャーロッテ・マールスドルフである。彼女は東ベルリンでアンティーク家具などを集めた私的な美術館を運営した。この女装者の波乱に満ちた生涯についての語りから、その背景にある東ドイツの重苦しい歴史を浮かび上がらせる試みだった。
舞台美術が素晴らしい。暗い劇場客席に入ると、カフェのように緑色に塗られた小さな丸テーブルが長方形の舞台を囲むように並んでいる。丸テーブルには写真立てが一つ乗っていてそこには白黒の男の子とライオンの写真がある。テーブルの周りには古ぼけた木製の椅子が三台ならんでいて、そこに客は座る。長方形の舞台は錆びた鉄のような赤褐色色。舞台の向こう側には、テーブルと同じ緑色に塗られた出入り口のドアが見える。役者は男女とも長いスカートの喪服を着ている。
女装の男性、シャーロッテが中心となる人物だが、16人の役者はシャーロッテの他に、「彼女」を取材する作者のダグ・ライトほか、語りのなかに登場する40人以上の人物を代わる代わる演じる。
異性装者の語り(ときに曖昧で矛盾がある)を複数化することで、語りを幾層にも重ね、その重なりの中から旧東ドイツの歴史・現実を浮かび上がらせるという演劇的仕掛けは興味深い。しかし同性愛、東ドイツといった題材は、今の私の関心からは遠い。自分とは関わりのない世界での出来事という感じがしてしまう。