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松尾スズキが北九州にある母校の小学校六年生を相手に行った二日間の授業の記録.授業科目は「大人とは何だ?」である.
学校での授業という縛りはかなり強烈だったようで,松尾の常識人としてのまっとうさが強調されすぎてしまい,内容はそれほど面白いわけではない.
相手は全く普通のこどもゆえに,松尾がいじったところでそうそう突飛なことはやってくれない.案外というかそもそもというか,子供というのはある面大人以上に型にはまった考え方しかできないのだ.松尾の授業はきっちりと組み立てられていていろいろな工夫がされていた.問題提示の仕方に工夫があり,子供を自然にことばでの思考に導いていく.授業実践のお手本である.松尾が子供におもねることなく,常に「大人」の立場で子供に対しているのが感じがいい.
二日間の授業の「しめ」が,「大人」の心にはぐっとくるようなことばで終わっている.「大人」について考えた二日間の授業のことは,明日になったら全部忘れてしまえと松尾は言う.そして自分が「大人」になって,自分の親とか育ててくれた人が自分より弱い立場になってしまった頃,大人について考えたこの授業のことを思い出して,親にもう一度「私を生んで育ててみてどうだった?」と聞いてみてほしい,と松尾は続ける.なぜならそれを聞かないまま,自分を育ててくれた人を失うのは,とても後悔することだから.
既に大人になってしまった僕は,今後,親が死んでしまうより前に,この質問をする機会があるだろうか? そういう機会がかりにあったとして,僕は果たしてしっかりと親と向き合って,この問いかけをすることができるのだろうか?